準備するもの
器具
- 気管チューブ
- 喉頭鏡
- スタイレット
- ジャクソンリース or バックバルブマスク
- 年齢相当の吸引チューブ(10-14Fr)
- 気管チューブ固定のテープ
薬剤
- アトロピン
- 鎮静薬
- 鎮静薬
- 筋弛緩薬
- リドカイン
モニター
- 心電図
- パルスオキシメーター
- カプノモニター
- 血圧計
人員
- 気道確保者、挿管介助者、薬剤投与およびモニター監視者の最低3人
カフあり ▷3.5+年齢÷4
カフなし ▷4+年齢÷4
早産児・低出生体重児:直0
0ヶ月-1歳:直1
1-2歳:直1 or 曲1-2
3-10歳:曲2
10-12歳:曲2-曲3
14歳以上:曲3
※直のブレードは1歳〜1歳半くらいまで(参考)
5+身長(cm)÷10
12+年齢÷2
チューブ内径×3
気管チューブ内径×1.5
挿管の手順
もちろん症例によって使い分けはありますが、水色の蛍光マーカーは実際に自分が使用している基本の薬剤と用量です。
施設でプロトコルなど決められた薬剤・用量がある場合はもちろんそちらを使用しましょう。
- 酸素化能が正常な児 ▷2-3分の100%酸素投与で約2分間の無呼吸に耐えうるとされる
- 酸素化障害がある児 ▷5分以上の酸素投与を行うことが望ましい
- アトロピン 0.01mg/kg(0.01-0.02 mg/kg)
※最小量 0.1mg 最大量 0.5mg
(溶き方)アトロピン 0.5mg/1mL+生食4mL ▶ 0.1mg/mL
メリット:迷走神経反射による徐脈の予防、分泌物抑制効果
適応:乳児+気道感染の1歳児が目安(個人的見解) - リドカイン 1-1.5 mg/kg ※頭蓋内亢進症例に対して投与
- ミダゾラム 0.2 mg/kg(0.1-0.3 mg/kg)
(溶き方)ミダゾラム 10mg/2mL+生食 8mL ▶ 1mg/mL - プロポフォール 2-5 mg/kg
- チオペンタール 2-5 mg/kg ※喘息症例では禁忌
- ケタミン 1-2mg/kg ※鎮痛作用(+) 脳圧亢進作用(+)
- フェンタニル 1μg/kg(1-4 μg/kg)
(溶き方)フェンタニル 0.1mg/2mL+生食 8mL ▶10μg/mL - ソセゴン®(ペンタゾシン) 0.3 mg/kg
よっぽど自発呼吸を残したい症例でなければ基本的に投与
咳嗽反射の抑制などメリットの方が大きい
量が多くなればなるほど鉛管現象(頚部・胸腹部の硬直し換気困難となる)が起こりやすくなることに注意▶緩徐に静注
呼吸抑制にも注意
- ロクロニウム(エスラックス®)1mg/kg(0.7-1.2 mg/kg)
(溶き方)ロクロニウム 25mg/2.5mL 原液 ▶10mg/mL - ベクロニウム 0.1 mg/kg
- スキサメトニウム 1-2mg/kg
- ブリディオン®(スガマデクス)緊急時16mg/kg(ロクロニウム投与3分後)
(溶き方)ブリディオン 200mg/2mL 原液 ▶ 100mg/mL
※添付文書では
浅い筋弛緩:2mg/kg 深い筋弛緩:4mg/kg 緊急:16mg/kg
挿管困難であり自発呼吸を残したほうがいいような緊急の場合に備えて筋弛緩拮抗薬も覚えておこう
小児は頭が大きいので頭部の高い枕は不要で薄い円座やタオルくらいでよい
- sniffing positionとは下位頸椎を屈曲+上位頸椎を伸展した姿勢
- sniffing positionをとると咽頭軸と喉頭軸のなす角度が小さくなり喉頭展開時に口腔軸もほぼ一致して声門が見やすくなる
- Ramp positionとは外耳孔を胸骨の高さに合わせる姿勢だが、Difficult airwayのガイドラインで推奨されている体位だが、挿管時にsniffing positionと比較して有効であるデータは現時点ではない
私がPICUを学んでいたときに、上司からsniffing positionの目安として外耳孔と胸骨の高さを合わせるよう口酸っぱく教わったが、正確にはRamp positionだったみたい。ただ『挿管は準備・姿勢で95%は成功するか決まる』と言われていたのはとてもいい教えだったと今となっては思うよ。
小児は口が小さく成人で頻用されるクロスフィンガー法は使いにくい
輪状軟骨の下方への軽度圧迫により解剖学的指標の確認が容易になることがある
カフへの空気の注入はまず最初にリークがあることを確認して1-2mLくらいリークがなくなるまで入れる
(耳たぶくらいの硬さと言われたりする)
▶落ち着いてからカフ圧径で適当な圧に調整する。カフ圧は20cmH2Oは越えない
- 胸郭の挙上:正常に上がっているか、左右差がないか
- 聴診で5点聴取:心窩部(胃)、両側前胸部、両側側胸部
- 気管チューブのくもり
- カプノモニター(6回換気後に確認):カプノメーター or ディスポーザブルCO2検出器
- リークの確認
気管チューブの固定方法は施設によってまちまちだけど、小児科では多く使われている固定法を以下に紹介するよ
- 2.5cm幅のテープを4-7cmに切り、さらに縦半分に3/4くらいまで切り込みを入れる
- ①の切れ込みの位置を口角に合わせ、①を頬部に貼る
- ②をチューブに巻きつける
- ③を下唇に貼る
- もう一本のテープも同様に①を頬部に貼り付け、②を挿管チューブに巻き付け、③を下口唇に貼り付ける
- 第2-3胸椎の間
- 胸腔内気管の中間
- 気管分岐部より0.5cm頭側および両側鎖骨中線を結んだラインの間
人工呼吸器の初期設定例
モード | PC(プレッシャーコントロール) SIMV |
呼吸回数 | 新生児:40-50 乳児:35 小児(就学前):25 小児(就学後):20 青年:18 ※小児科当直医マニュアルでは生理学的な正常呼吸回数より少ない呼吸回数で開始と記載 |
吸気圧(cmH2O) | PIP(最大吸気圧)≦30の範囲で 1回換気量が6-8mL/kgを目安に設定 |
吸気時間(秒) | 吸気:呼気=1:2が目安 乳児:0.4-0.5sec 小児:0.85-1.0sec |
PSV(cmH2O) | 補助換気(Pressure support:PS) PS 10 から開始 自発呼吸のVT4-6mL/kg/となるよう調整 |
PEEP(cmH2O) | 5-15 酸素化能の悪化に応じて増加 FiO2≦0.3▶PEEP4 FiO2 0.4▶PEEP 5-7 FiO2 0.5▶PEEP6-8 FiO2≧0.6▶PEEP≧10 |
フロートリガ | 2mmHgからスタート オートトリガーなどあるときは2-5くらいで調整 |
酸素濃度(%) | FiO2 0.5くらいから開始 SpO2≧92%となるよう必要最小限のFiO2に設定 |
アラーム設定 | 最高気道内圧下限:設定最高気道内圧−3〜5cmH2O PEEP圧下限:PEEP−1〜3cmH2O 高圧アラーム:設定PIP+10cmH2O |
【参考文献】
- 岡本光宏 『めざせ即戦力レジデント!小児科ですぐに戦えるホコとタテ』 診断と治療社
- 神奈川県立こども医療センター 小児内科・小児外科 『小児科当直医マニュアル 改定第15版』 診断と治療社
- 佐和貞治 『KPUM 小児ICUマニュアル Version8』 永井書店
- 青山和義 『見える!できる!気管挿管 写真・イラスト・動画でわかる手技のコツ』 羊土社
- 神奈川県立こども医療センター 『新生児診療マニュアル 第6版」 東京医学社
- 東京大学医学部小児科 『東大病院新生児診療マニュアル』 診断と治療社
- Ramped versus sniffing position for tracheal intubation: A systematic review and meta-analysis. Am J Emerg Med. 2020
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