1錠でも死に至る!?小児の薬物誤飲

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薬物誤飲はたまに経験するが、1錠でもこどもにとっては致死的なものがあり大変危険。どの薬が危険かおおまかに把握しておこう。

目次

診療の流れ

STEP
見た目の初期評価⇨ABCD

薬物誤飲も基本は一緒!やはり最初はABCDの評価・介入

Aに問題:気道確保(吸引、肩枕、気管挿管など)
Bに問題:酸素投与、補助換気など
Cに問題:末梢静脈ルート確保・補液、カテコラミン投与
Dに問題:血糖チェック

STEP
病歴聴取

ABCDが安定後または他の人が病歴聴取を行う。
何を、いつ、どのくらい
家族には実際に飲んだものをもってきてもらう。

One pill can killに当てはまるかチェックしよう。

また、致死量や半減期、最高血中濃度到達時間などを薬剤師さんに問い合わせるのが一番確実

STEP
原因薬物がわからなければトキシドロームであたりをつける

こういう概念があるということは知っておくべきですが、とてもマニアックです。
いざこういう経験に出会ったときにググって調べるでいいでしょう。

STEP
胃洗浄・活性炭・拮抗薬の適応を考える

下記にも解説するが、基本的には胃洗浄・活性炭とも摂取後1時間以内と記載されている教科書が多い

そのため適応となることは少ないが、覚えておこう。

One pill can kill

世の中には多くの薬剤が、様々な規格で流通している。
成人であれば全く問題にならないにも関わらず、幼児にとってはごく少量で致死的となってしまうものも存在しており、「One pill can kill」という呼称が生まれた。

小児科医は知っておくべき概念である。

具体的には体重10㎏の幼児が1-2錠もしくはティースプーン1-2杯摂取するだけで致死的となる場合を指す。
なおティースプーン1杯は約5mlほどに相当する。
米国におけるOne pill can killの薬剤を下図に示しているが、日本で流通している規格と異なる部分があるので注意。

代表的には抗うつ薬、抗不整脈薬、カルシウム拮抗薬、麻薬、血糖降下薬、抗血小板薬、DOAC、抗痙攣薬、多発性硬化症の薬剤、テオフィリン、アルコール、洗濯洗剤、石油など

Koren G, Nachmani A. Drugs that Can Kill a Toddler with One Tablet or Teaspoonful: A 2018 Updated List. Clin Drug Investig. 2019;39(2):217-220.

胃洗浄

【適応】摂取後1時間以内(ホコタテでは4時間)+大量摂取が疑われる or 毒性が高い物質

【合併症】誤嚥性肺炎、出血、食道・胃穿孔、低酸素血症、電解質異常、自律神経反射

【禁忌】有機溶剤、強酸や強アルカリなどの腐食性毒物、上部消化管術後、出血性素因

活性炭

【適応】摂取後1時間以内(ホコ・タテでは4時間以内)+大量摂取が疑われる or 毒性が高い物質

【合併症】誤嚥性肺炎、出血、食道・胃穿孔、低酸素血症、電解質異常、自律神経反射

【禁忌】腸閉塞、消化管穿孔、腸管運動を抑制する薬物の服用、麻痺性イレウス

単回投与繰り返し投与無効
アスピリン
アセトアミノフェン
バルビツレート
フェニトイン
テオフィリン
三環系・四環系抗うつ薬
【エビデンスあり】
テオフィリン(テオドール,テオロング)
三環系抗うつ薬
フェノバルビタール(フェノバール)
フェノチアジン系薬
オピオイド
カルシウム拮抗薬
抗コリン薬
【エビデンスないが排泄を増強されると考えられるもの】
カルバマゼピン(テグレトール)
フェニトイン(アレビアチン)
サリチル酸(アスピリンなど)
バルプロ酸,ジギトキシン
サイクロスポリン
フェニルブタゾン
ナドロール(ナデックス)
強酸
強アルカリ
エタノール
エチレングリコール

硫酸鉄
リチウム
ヒ素
カリウム
ヨウ素
ホウ素
フッ化物
臭化物

拮抗薬

ほとんどの中毒は全身管理のみで改善することが多いが、特異的な拮抗薬については知っておこう。

中毒拮抗薬
アセトアミノフェンNアセチルシステイン
ベンゾジアゼピンフルマゼニル ※半減期が短く、診断的意義はあるが治療拮抗薬としては使えない
β-blockerグルカゴン
Ca拮抗薬Ca、高インスリン・正常血糖療法、脂肪乳剤持続療法
シアンヒドロコバラミン、亜硝酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム
エチレングリコールエタノール
メタノールエタノール
オピオイドナロキソン ※半減期が短く、診断的意義はあるが治療拮抗薬としては使えない
有機リンPAM、アトロピン
SU薬糖、ソマトスタチン
三環系抗うつ薬炭酸水素ナトリウム、脂肪乳剤持続療法

それでも困ったら?

費用がかかってしまうが、中毒110番などは困ったときに助けになってくれるだろう。
こういうものがあることを知っておこう。
いざというときに役立つはずだ。

電話による中毒情報
中毒110番
(情報量:1件2,000円
大阪:072-726-9923(365日、24時間) 
つくば:029-851-9999(365日、9-21時
たばこ誤飲事故専用電話
(情報量:無料)
全国共通:072-726-9922(365日、24時間
自動音声応答による一般市民向け情報
インターネットによる中毒情報
日本中毒情報センター
日本中毒学会
国立医薬品食品衛生研究所
緑の安全推進協会
(農薬中毒)

あとは疫学や小児の薬物吸収の特徴などを詳しく知りたければ
ER型救急を志す人達で構成される特定非営利活動法人(NPO法人) Emergency Medicine Allianceも参考にするとよい

Take Home Message
  • やっぱりいつでもABCDが重要
  • 胃洗浄・活性炭の適応は摂取後1時間以内

【参考文献】

  • 岡本光宏 『めざせ即戦力レジデント!小児科ですぐに戦えるホコとタテ』 診断と治療社
  • 神奈川県立こども医療センター 小児内科・小児外科 『小児科当直医マニュアル 改定第15版』  診断と治療社
  • 一般社団法人 日本中毒学会ホームページ
  • 井上信明 『改定ER的小児救急』 CPR
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