【必修】迷ったら行うべき!小児のステロイドカバーの方法

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小児科では膠原病などの頻度は成人と比較して少なく、ステロイド長期使用患者が少ないため、ステロイドカバーをしなきゃいけない場面はあまりないが、重症心身障害児などステロイドを普段から長期内服しているひとは多く、呼吸器感染などを契機に重篤な状態で運ばれることも少なくない。急性副腎不全予防のためにステロイドカバーが必要になることも多い。そういったときのためにもステロイドカバーの方法について学んでおこう。

目次

急性副腎不全とは

副腎皮質から十分な糖質/鉱質コルチコイドが分泌されない疾患・病態において、感染などのストレス時にステロイド不足のために様々な症状が生じる状態

急性副腎不全の原因となる疾病

(永続的)副腎皮質機能低下症を生じる基礎疾患の合併

原発性副腎皮質機能低下症

ex)21水酸化酵素欠損症、副腎白質ジストロフィー、先天性副腎皮質低形成

副腎皮質機能低下による急性副腎不全の場合は鉱質コルチコイド欠乏のため塩喪失傾向・高K血症を示しうる

続発性副腎皮質機能低下症(下垂体性、視床下部性)

 ex)医原性Cushing症候群、MRIにおいて下垂体茎がみえない下垂体前葉機能低下症、脳腫瘍に代表される下垂体・視床下部の病変に伴う下垂体前葉機能低下症

鉱質コルチコイド欠乏は示さない、症例によってはSIADH様の病態を呈しうる

副腎以外の要因の合併時に見られる(いわば二次的な)原発性副腎皮質機能低下症

ex)ショック、多臓器不全、敗血症、髄膜炎

どんなときに内因性ステロイドの抑制を疑うか

抑制があると考える患者:ステロイドカバーが必須

はじめて学ぶ小児内分泌

  • 特に基礎疾患のない成人で10-15mg/日のプレドニゾロンを3週間以上飲んでいる患者
  • 医療関係者がみて明らかにmoon faceがあるとき

小児科ステロイドの使い方・止め方・続け方

  • 過去1年間プレドニゾロン20mg/日相当以上の使用が3週間以上ある
  • ステロイドの投与量・投与期間に関わらずCushing症状を認める
  • 一定量(フルチカゾン750μg/日、ベクロメタゾン・ブデソニド 1,500μg/日)以上のステロイド吸入を行っている
    ※小児は吸入ステロイドによってHPA系が抑制されやすく、フルチカゾン500-2000μg/日で副腎機能不全の報告がある)

抑制はないと考えて良い患者:ステロイドカバーは不要

  • ステロイド中止後1年以上経過している
  • ステロイドの投与量に関わらず、使用歴が3週間未満
  • 投与期間に関わらず、プレドニゾロン 5mg/日相当未満の使用

抑制されていのかどうか不明な患者:抑制があるものとしてステロイドカバーを行う

  • 過去1年間にプレドニゾロン5-20mg/日相当を3週間以上継続している場合

症状

  • 疲労感・食欲不振・めまい・頭痛などの全身症状
  • 下痢・嘔吐・腹痛などの腹部症状
  • これらの症状は治療開始直後から通常は消失する
  • 最重症の発作では意識消失、痙攣を起こし、治療が遅れれば死に至ることもあり、現在の日本でも死亡例が存在する

検査所見

  • 急性副腎不全時の一般的検査所見として4-5歳以下の年齢では、低血糖、低ナトリウム、高カリウムを認める頻度が高い。
  • 低ナトリウム血症は塩喪失の病態とSIADH様の病態が原因としてある
  • 意識障害を認めるような副腎不全でもこれらの所見を認めないことも多く、一般採血で副腎不全の除外を行ってはならない

治療

基礎疾患のある子どもがたまたま胃腸炎を合併したのか、急性副腎不全により胃腸症状が出ているのかを区別することは容易でないため、多くの場合は、急性副腎不全の合併があると考えて治療を行う

  • 生体の糖質コルチコイド、コルチゾールの1日分泌量は5-8mg/m2程度とされる
  • ストレス時にはその約10倍が分泌される
東京都立小児小児総合医療センターの入院治療例
  • 感染など合併する病態の治療
  • 副腎皮質ステロイドをストレス量投与
    ヒドロコルチゾン(コートリル®) 20-25mg/m2/回をゆっくり静脈内投与:その後24時間で80-100mg/m2/日で持続投与
  • 脱水、Na喪失による低Na血症の合併のある場合
    ②に加え、低張性脱水に準じた治療
  • 水貯溜、SIADH様の病態の合併のある場合(ACTH分泌分泌不全をもつ症例に多い)
    ②に加え、水制限
  • 低血糖の予防
    ②に加え、ブドウ糖補給
    ex)1歳,10kg▶生食500mLに50%ブドウ糖20mLを入れ、100mL/h(GIR 3.3) or 細胞外液に準じる輸液製剤
  • この投与量では鉱質コルチコイド作用も期待できるため、特に鉱質コルチコイドを補充する必要はない
  • デキサメタゾンでは鉱質コルチコイド作用がないことに注意
身体的ストレスの程度具体的な状況ヒドロコルチゾン投与量
軽度予防接種、微熱までの上気道炎維持量
中等症高熱(38.5℃以上)を伴う感染症
嘔吐、下痢、食事摂取不良
小手術、外傷、歯科治療、熱傷
維持量の3-4倍 or
50-100 mg/m2/日
重度敗血症、大手術100mg/m2/日
稲毛康司 『小児科ステロイドの使い方・止め方・続け方』

※副腎クリーゼを疑う場合や全身麻酔による手術前の場合、まずヒドロコルチゾン 50mg/m2乳幼児:25mg、学童:50mg、成人:100mg)をボーラス投与する
※静注する場合には、6時間毎に分割してボーラス投与するよりも持続投与が望ましい

ステロイドの効力比と等価用量

一般名
製品名
臨床的対応量
(mg)
抗炎症作用電解質作用
短時間型(8-12h)ヒドロコルチゾン
コートリル®錠
ソル・コーテフ®注
2011
コルチゾン
コートン®錠
250.80.8
中間型(12-36h)プレドニゾロン
プレドニン®錠・注
540.8
メチルプレドニゾロン
メドロール®錠
ソル・メドロール®注
450.5
トリアムシノロン
レダコート®錠
450
長時間型(36-72h)デキサメタゾン
デカドロン®錠・注
0.7525-300
ベタメタゾン
リンデロン®錠・注
0.7525-300

内服の吸収率

経口ステロイドは吸収率が高いため、消化吸収が問題なければ、内服と注射の効果の違いはないとされており、内服↔注射の用量調整は不要といわれている


【参考文献】

  • 長谷川行洋 『はじめて学ぶ小児内分泌 改定第2版』 診断と治療社
  • 稲毛康司『小児科ステロイドの使い方・止め方・続け方』 文光堂
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