タバコ誤飲

ニコチンの幼児致死量は10-20mgだが、タバコ1本には16-24mgのニコチンが含まれている

  • 小児の毒性用量:0.1mg/kg最小致死量:1mg/kg1
  • 2mg(約0.1mg/kg)傾眠脱力感、発汗、嘔吐、縮瞳、振戦などが誘発される
目次

タバコの入った液体を飲んだパターン

  • 灰皿やジュースの空き缶などのタバコに浸かっていた液体を飲むケースは危険
  • タバコを30分間水にひたすとニコチンの100%が溶出する
  • タバコが浸かっていた液体を飲んだケースでは、1時間以内であれば胃洗浄4時間以内であれば活性炭投与(ホコタテ・当直マニュアル) ※日本中毒学会HPは活性炭投与は1時間以内としている
  • タバコ誤飲から4時間以上無症状であれば安全と言える

タバコそのものを飲んだパターン

  • 飲み込んでも嘔吐で排出されるため、多くの場合はかじっただけであり、飲み込んでいることは少なく、重篤な症状をきたすのは稀
  • タバコ誤飲が2cm以下であれば処置不要経過観察も不要
  • タバコ誤飲が2cm以上の場合は2時間経過観察

加熱式タバコを飲んだパターン

2016年4月

日本で加熱式タバコの販売開始以降、加熱式タバコ誤飲の事例が増加している

2017年後半

従来の紙巻きタバコと加熱式タバコの誤飲の日本中毒センターへの相談件数が逆転した

2021年9月

たばこスティックの内部に金属片を仕込ませた加熱式タバコが販売開始され、
タバコ誤飲時に同時に金属片をも誤飲してしまう症例の報告が増加した

金属片は加熱ブレードと言われるが、元々本体キットに備わっておりメンテナンス(掃除)をする必要があった。
そこでスティック側に使い捨て加熱ブレードを仕込ませることによってメンテナンスが不要となった。
今後さらにこの金属片内蔵加熱式タバコは増加すると思われる。

  • 加熱式タバコ葉充填部分は12-44mmと短い
  • 紙巻きタバコにはたばこ事業法によりタール、ニコチンの測定方法や表示が義務付けられているが、
    加熱式タバコには表示義務がない
  • 金属片内蔵加熱式タバコの金属片は、製品によって様々だが、カッターナイフの替刃(0.38mm)よりも薄く消化管損傷の危険性がある
  • 金属片のためX線で描出は可能だがとても薄いため、胸骨や椎骨などの骨と重なっば場合、金属片が照射方向と平行になった場合などは、確認が困難となる可能性がある
  • 金属片がXpで確認できない場合はCTも考慮される
  • 小児科学会 Injury Alertの6症例中2症例は摘除の方針
  • 金属片はマグネットカテーテルに吸着しうるが、引き上げるときに食道や咽頭などの損傷が懸念されるため、全身麻酔下の内視鏡的摘除が安全かもしれない

IQOS ILUMA®アイコス イルマ(本体キット)シリーズには
加熱式ブレードが入っておらず、スティック側に金属片が入っているため注意!

加熱式タバコの注意点
  • タバコ葉の充填部分が短く、一度に大量のタバコ葉の全量を摂取してしまう可能性がある
  • 1本あたりのニコチン量が多い
  • 非常に薄い金属片が仕込まれているため消化管損傷の危険性がある
  • 金属片は薄く、X線で確認が難しいことがある

症状

  • 摂取から10-60分以内に嘔吐を生じる
  • その後2−4時間以内に、興奮、頭痛、振戦、呼吸促迫、下痢、顔色不良、発汗
  • 重症例ではけいれん、呼吸停止、意識障害

治療

胃洗浄

【適応】摂取後1時間以内(ホコタテでは1時間)

【合併症】誤嚥性肺炎、出血、食道・胃穿孔、低酸素血症、電解質異常、自律神経反射

【禁忌】有機溶剤、強酸や強アルカリなどの腐食性毒物、上部消化管術後、出血性素因

活性炭

【適応】摂取後1時間以内(ホコ・タテでは4時間以内

【合併症】誤嚥性肺炎、出血、食道・胃穿孔、低酸素血症、電解質異常、自律神経反射

【禁忌】腸閉塞、消化管穿孔、腸管運動を抑制する薬物の服用、麻痺性イレウス

その他の治療

  • 副交換刺激作用が著明なときはアトロピン 0.02mg/kg
  • けいれんが出現した場合は気道確保はしっかり行いながら、ミダゾラムなどの抗けいれん薬を投与

牛乳や水を飲ませることでニコチンの溶出が進む可能性があるため、水分の経口摂取は控える


【参考文献】

  1. Connoly GN, Richter P, Aleguas A Jr, et al. Unintentional chili poisonings through ingestion of conventional and novel tobacco productus. Pediatrics 2010; ↩︎
  • 山田実希 「金属方内蔵加熱式タバコ誤飲症例と類似症例」『日本小児科学会雑誌』 127巻8号 1074-1079(2023年)
  • 岡本光宏 『めざせ即戦力レジデント!小児科ですぐに戦えるホコとタテ』診断と治療社 2022年4月
  • 独立行政法人国民生活センター 「なくならない乳幼児による加熱式たばこの誤飲に注意 -最近では金属片が内蔵されたスティックの誤飲も-」
  • Injury Alert (傷害速報)類似事例 「金属片を内蔵した加熱式タバコの誤飲」(No.121 金属片を内蔵した加熱式タバコの誤飲による消化管異物 8)
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