【呼吸管理に実は重要】加湿器を要点だけ勉強しよう!MR850の実際の使い方も解説!

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人工呼吸器のことについてはある程度勉強してきたけど、加湿器に関してはあまり手が回らず、そのままの設定にしている人も多いのではないだろうか?「痰が固くてなかなか吸引できません。」「結露が多くてどうにかしてください」と看護師さんから言われることはしばしば経験すると思う。これを機にさらっと勉強して対応ができるようになろう。

目次

加温・加湿の必要性

加温・加湿が適切になされないと、気道粘膜の乾燥や炎症を起こし、線毛運動障害分泌物の粘性増加による排痰不良や肺炎を引き起こす。最悪の場合は気道閉塞などの致死的合併症もきたしうる

自然呼吸と人工呼吸器の加湿における違い

自然呼吸

  • 口や鼻から空気を吸入
  • 鼻腔や口腔などの気道を通過する間に、粘膜からの水蒸気により加温加湿され肺胞に達する
  • 気管分岐部付近では、ほぼ37℃、相対湿度100%に達する

人工呼吸器

  • 圧縮酸素や空気などの医療用ガスには湿度が含まれていない
  • 気管挿管や気管切開下では上気道をバイパスする

▶そのままでは加温加湿されずに乾燥した空気が肺に入る

飽和水蒸気と相対湿度・絶対湿度

飽和水蒸気量:1L中の空気中に存在できる水蒸気の最大量 ▶気温が高いほど飽和水蒸気量は増加する

絶対湿度:1Lの空気中に含まれる水蒸気の量

相対湿度:飽和水蒸気量に対する絶対湿度の割合

冷却すると飽和水蒸気量は低下し、相対湿度は増加する。
冷却により絶対湿度が飽和水蒸気量を上回れば、一部の水分子は水蒸気として存在できなくなり液体となる。
これが結露である。
▶呼吸器回路内に結露を生じている場合、気体の相対湿度はほぼ100%と考えられる

https://www.try-it.jp/keyword_articles/58/

推奨される加湿のレベル

アメリカ呼吸療法学会(AARC)の推奨

【加温加湿器】
温度:34-41℃、絶対湿度:33-44mgH2O/L

【人工鼻】
絶対湿度:30mgH2O以上

低い温度▶絶対湿度の低下や低体温の原因
高い温度▶気道粘膜熱傷の原因となる
過剰な加湿▶気道内部で結露を生じ、繊毛運動機能低下や気道分泌物の増加などの原因となる

加温・加湿の方法

スクロールできます
方法種類大きさ特徴

ネブライザー
エアロゾル1-40μm粒子が大きく末梢気道に達する前に気道に付着しやすく加湿効果に劣る
粒子が大きく細菌やウイルスを運搬する危険性がある

加温加湿器
水蒸気0.0001μm粒子が小さく末梢気道に到達しやすい
粒子が小さく細菌やウイルスを運搬することがない
基本的には加温加湿器の方が望ましい

加湿が不足している場合、ネブライザーを使用することがあるが、ネブライザーの有効性は認められていない。

ネブライザーに生食、半生食、蒸留水なども用いることはbland aerosolと呼ばれ、気道刺激性、気管支収縮などの有害事象を引き起こすこともあり、一部の適応症例以外は推奨されていない

加温加湿器の設定調整や機種変更をまず最初に行う必要がある

加温加湿器の仕組み

現在主流なのがpass-over型という貯水槽の水を温めて水を蒸発させるという単純な原理。

よく使用されているのがMR-850(Fisher&Pykel Healthcare)

吸気回路内に電熱線を入れて温めることにより、外部からの冷却による回路内結露を防いでいる

人工鼻

人工鼻の原理と特徴

  • 患者の呼気中に含まれる水蒸気と熱を補足して次の吸気ガスに与えることで加温加湿を行う
  • 種類によって加湿効率や気流抵抗、機械的死腔量、除菌フィルタ機能の有無などの違いがある

人工鼻の注意点

  • 抵抗
    内部に使用する繊維などの材質により気流に対する抵抗がある
    呼吸仕事量増加換気量減少などの原因となる可能性がある
  • 四腔効果
    人工鼻の容量(30-90mL)に相当する分の機械的死腔量をもつ
    元々換気量が少ない人ほど影響が大きくなり換気量低下につながるので注意を要する

人工鼻を避けるべき症例

  • 人工鼻の抵抗、四腔が無視できない場合
    自発呼吸、CPAPなどの場合、高二酸化炭素血症
  • 気道分泌物が人口鼻まで到達する場合
    泡沫痰を吹き出す肺水腫、気道出血
    ※人工鼻が濡れると抵抗が大きくなるため
  • 肺・気道から大量のガスリークがある場合(呼気量が吸気量の70%未満)
    カフなしチューブ使用例▶小児では一般的に人工鼻は使用しないことが多い
  • 人工鼻での加湿不十分な場合
  • 人工鼻重量の保持が困難な場合
  • その他:大換気量(10L/min以上)、低体温(<32℃)

加温加湿の評価

  • 喀痰が柔らかい
  • 吸気回路終末部の温度モニタが適温(35-39℃
  • 吸気回路末端付近で内面に結露がある
  • 気管チューブ内壁に結露、水滴がある
  • 吸引カテーテルが気管チューブにスムーズに入る

加湿不足と判断されたときの対応

加温加湿器使用中の場合

STEP
機器のチェック

水はきちんと入っているか、電源は入っているか、吸気呼気回路接続は正しいか確認

STEP
気管チューブに結露があるか?

ない、少ない▶加温加湿器の設定を再調整する(37℃以上)

自動(MR850)▶マニュアルモードに変更する

それでも解決しない場合は加温加湿器の可能性を考え、他の機器に交換

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基本はAutoモードが一番使いやすいです。
それで問題が生じるのであればマニュアルモードをためしてみましょう。

人工鼻使用中の場合

▶加温加湿器に変更

MR850の実際の使い方

挿管モード/マスクモードの変更方法

長押しすると変更される

マニュアルモード/オートモードの各設定方法

  • 長押しする
  • 長押しを解除したら“HC”と表示されるのでを再度押しつづける
  • 現在のモードが表示されるのでを押したまま、を押していくと各モードに設定される
  • 設定したいモードが表示されたら指を離す

各モードと設定温度

挿管モード】の温度設定
運転モードディスプレイ表示チャンバ出口温度呼吸回路口元温度
オート-A-35.5-42℃39-40℃
マニュアル0.037℃40℃
1.038℃40℃
2.039℃39℃
3.040℃39℃
4.041℃39℃
5.042℃39℃
【マスクモード】の温度設定
運転モードディスプレイ表示チャンバ出口温度呼吸回路口元温度
オート-A-31.0-36℃34℃
マニュアル0.031℃34℃
1.032℃34℃
2.033℃34℃
3.034℃34℃
4.035℃34℃
5.036℃34℃

チャンバー温度の確認方法

ボタンを長押しするとチャンバー出口部が点灯して、チャンバー出口部温度が表示される

f:id:yasashi-kiki:20180606235407p:plain

続いて口元温度が点灯して口元温度が表示される

f:id:yasashi-kiki:20180607000222p:plain

常に表示されている温度表示はチャンバー出口と口元で温度の低い方が表示されているので注意


【参考文献】

  • 大藤 純 「呼吸管理のデバイス 呼吸管理中の加温加湿デバイス:その原理と使用法」『人工呼吸』Jpn J Respir Care 2020; 37: 179-186
  • 磨田 裕 「加温加湿の基礎-吸入器の湿度・温度の関係から臨床での諸問題までを押さえよう-」『Clinical Engineering』 vol 29 NO.4 2018
  • Kallstrom TJ「AARC clinical practice guideline. Bland aerosol administration–2003 revision & update『Respir Care』48(5):529-533, 2003
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