小児科医をやっていると必ず遭遇する『おちんちんの腫れ』
経験したことがないと泌尿器科にすぐに頼みたくなりますが、泌尿器科は当直をしておらず頼めないこともしばしば。
小児科医でも対応しなければなりません。
しかし、おちんちんの腫れは鑑別疾患も少なく難しくないので対応をマスターしておきましょう。
おちんちんの腫れのほとんどは『亀頭包皮炎』か『嵌頓包茎』
おちんちんの腫れを主訴としてやってくる患者は少なくありません。
鑑別疾患はあまり多くなく、基本的には『亀頭包皮炎』か『嵌頓包茎』です。
こどもで圧倒的に多いのが亀頭包皮炎で、見逃してはいけないのが嵌頓包茎です。
見た目で基本的には鑑別できるので安心してください。
亀頭包皮炎は陰茎の先端をメインとして亀頭やその周囲の包皮の発赤・腫脹を認めます。
小児は基本的に包茎が多いので亀頭は露出していないことが多いです。
嵌頓包茎の見た目の特徴は包皮がむけて亀頭が露出しているのが最大の特徴です
亀頭包皮炎
概要
- 亀頭包皮炎は亀頭と包皮の間に発生する感染症
- 2-5歳に多い1
Antaa Slide『おちんちんが変!ペニス(包皮)のトラブル〜小児を中心に〜』より引用
原因
- 多くは細菌感染による
- 原因菌は黄色ブドウ球菌などのグラム陽性球菌がほとんどだが、プロテウス属やバクテロイデス属などのこともある2
- 小児は生理的に包茎が多いので感染を起こしやすい
症状
- 陰茎の腫脹, 発赤, 疼痛
- ときに排膿を認める
- ひどい場合は尿閉
チェックポイント
自排尿がでているかを必ず確認しましょう。
高度な腫脹や強い痛みにより排尿障害を呈している場合は導尿やカテーテル留置が必要です。
この場合は泌尿器科や小児外科に相談した方がいいでしょう。
発熱がある場合は尿路感染症を合併している可能性があるので注意してください。
治療
【軽症例】
1日1-2回 陰部に塗布 リンデロンVG®
- ステロイドが含有された抗菌薬が処方されることが多いが、ゲンタシン軟膏などでも代用可
- 多くの場合はこれで2-3日で軽快します
【重症例】排膿、排尿時痛
軟膏に加え、第1世代もしくは第2世代セフェム計抗菌薬内服を追加
ケフラール® 20-40 mg/kg/日 分3 数日〜1週間3
軟膏の塗り方
- 入浴時に包皮をよく洗い、タオルなどで水気を拭き取る
- 軽く包皮を陰茎の根本の方に引っ張る
- 亀頭が見えていたらそこに軟膏を塗る
- 亀頭が見えていたらそこに軟膏を塗る
※亀頭が露出しない場合は無理に引っ張らずになるべく皮の中に入るようになんとなく塗っておきましょう
予防
- 包皮が汚染していることが原因となるため、陰部を汚い手で触らない、おむつをこまめに変えるなどの陰部の衛生管理を指導する
Disposition
- 多くの場合は帰宅可能
- 発熱や尿閉など呈していない場合は帰宅可能
- 翌日泌尿器科外来もしくは小児科外来受診を指示(理想は泌尿器科)
- カテーテル留置が必要な場合は小児科医であれば入院させたほうが無難(慣れている泌尿器科であれば親に指導して帰宅も可)
注意すべき疾患
閉塞性乾燥性亀頭炎が疑わしい場合は泌尿器科へ紹介しましょう
閉塞性乾燥性亀頭炎(Balantis xerotica obliterans:BXO)
- 包皮および亀頭の慢性・進行性の炎症性疾患
- 包皮輪が白く瘢痕化する
- 初めは包皮に限局するが放置すると亀頭・外尿道口・尿道へと病変が進展し、外尿道口や尿道狭窄を起こすことがあるため注意が必要
- 診断確定には病理組織学的所見が必要
- 多くは手術適応となる
嵌頓包茎
亀頭包皮炎より見逃してはいけないのが嵌頓包茎です。
嵌頓包茎は最悪の場合、血流不全により壊死につながるため急いで絞扼を解除する必要があります。
概要
- 包皮口に十分な伸展性がないことが病因
- 伸展性が不十分な状態で無理に包皮をめくり亀頭を露出させたことで絞扼し包皮のリンパ浮腫や亀頭部の血流障害をきたした状態が嵌頓包茎
原因
- 多くは保護者によって包皮を剥かれて戻さない状態で放置されることで発症することが多い
医者もカテ尿採取の後に包皮を剥いたまま放置しないように気をつけてくださいね!
症状
- 亀頭包皮の腫脹・発赤
- 乳幼児では亀頭が露出されたことによる刺激が強く、衣服が亀頭に接触するだけでも痛みを伴う
- 思春期では絞扼された亀頭部の循環不全を伴った痛みを伴うこともある
- 絞扼が強い場合は、勃起が戻らず亀頭は充血し暗赤色に変化する場合もある
亀頭包皮炎と嵌頓包茎の見極めPoint
嵌頓包茎は包皮がむけて亀頭が露出しているのが最大の特徴です。
多くの場合は見た目でわかります。
まれに浮腫が強く亀頭包皮炎との鑑別が難しいことがありますが、嵌頓包茎は狭窄部位が必ず存在します。
治療
用手的整復
まずは整復を試みましょう
陰茎をガーゼで包み、握るようにして5-10分ほど圧迫して浮腫を軽減させる
両手の親指で亀頭を陰茎根部へ、ほかの指を包皮に引っ掛けて亀頭へ戻すように整復する
緊急手術
整復ができなかった場合は緊急手術となります。
泌尿器科もしくは小児外科にコンサルトしましょう。
Disposition
- 整復できた場合は翌日以降の泌尿器科受診を指示
- 整復できなかった場合は泌尿器科や小児外科にコンサルトし緊急手術
包茎に関しては別記事で詳しく解説していますのでお読みください⬇⬇
Take home message
- おちんちんの腫れはほとんどが亀頭包皮炎
- 嵌頓包茎を見逃すな!
- 小児の無症状の包茎は治療適応は基本なし
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