喉頭軟化症
- 乳児期の喘鳴を認める疾患の中で、最も頻度の高い疾患で約70%を占める
- 喉頭を構成する構造の脆弱性や余剰が原因
- 吸気時に内腔へ引き込まれることにより上気道閉塞症状を認める
- 症例の多くは1歳前後に自然軽快する
- 生後4-8ヶ月にかけて喘鳴が次第に増強する時期がある
- 気道感染時などには症状が増悪することがあるため注意が必要
- 10%前後の重症例は上気道閉塞症状が持続し、ときに生命を脅かす呼吸障害や、哺乳不良に伴う体重増加不良を認め、外科的治療が必要な場合がある
- 診断は喉頭ファイバースコープが必須
Type1:披裂部型
吸気時に披裂部の余剰粘膜が引き込まれるもの
Type2:被裂喉頭蓋ヒダ型
被裂喉頭蓋ヒダがもともと短縮しており、吸気時に左右の被裂喉頭蓋ヒダが正中方向に向かって引き込まれるもの
Type3:喉頭蓋型
吸気時に喉頭蓋が声門を塞ぐように後方へ引き込まれるもの

喉頭軟化症、舌根嚢胞、喉頭嚢胞、声帯麻痺、声門下狭窄、声門下血管腫、クループ症候群、喉頭異物
診断
- 喉頭ファイバーが必須
- 正常時でも激しく啼泣した際には喉頭蓋や披裂部が引き込まれる所見が観察されることがある
- 啼泣を避けるため、鎮静下での観察方法もあるが、自発呼吸が弱くなることによる軟化症所見の過小評価や分泌物増加などが懸念される。
- 鼻腔から咽頭、喉頭、声門部までの上気道全体を観察できる経鼻で行うのが一般的。
- 喉頭軟化症の患児は、他の気道病変を認めることがあるため喉頭軟化症と診断されたら、気管支ファイバーで声門下狭窄や気管軟化症などの下気道病変の検索を行うことも重要
治療
■呼吸管理
- 気道感染に罹患したときなど呼吸状態が悪化した場合や重症例では、呼吸障害の程度に応じて酸素投与やNPPV、人工呼吸器管理を行う
- 吸気での陰圧による気道狭窄を防ぐために、高めの圧のPEEPもしくはCPAPを設定する。
- 啼泣により呼吸障害が悪化するため、安静を保つ目的で適宜鎮静を行う
- 喉頭ファイバーで喉頭浮腫の合併を認める場合には、クループ症候群や抜管後上気道閉塞の治療に準じ、ステロイド投与やアドレナリン吸入を考慮する
■外科的治療
- 喉頭軟化症の5-10%は哺乳不良や慢性呼吸不全による体重増加不良やチアノーゼを認める重症例であり、外科的治療が必要
- 気管切開術を選択することが多い
- 気管切開術は、成長とともに軽快するのを期待し、喉頭の病変部をバイパスすることで気道を確保する
- 病変部の軟化症の症状が改善したら、気管切開からの離脱を考慮
- 喉頭形成術は、type1に対して披裂部余剰粘膜の切除、type2に対して被裂喉頭蓋ヒダ短縮部の切除、type3に対して喉頭蓋の舌根部への釣り上げ縫合を行う
気管気管支軟化症
- 定義は気管軟骨の脆弱性あるいは欠損による内腔の狭小化
- 先天性の原発性軟化症はまれ
- 小児のほとんどは食道気管瘻に関連したもの or 外部からの心血管や腫瘍などによる圧迫を受けたもの
- 喉頭軟化症と同様に軽症例では成長とともに、気道の脆弱性が改善する
診断
- 通年性の呼気性喘鳴や啼泣時チアノーゼ(dying spell)、繰り返す呼吸器感染症などで疑う
- 気管支鏡で確定診断
- 気管軟骨部と膜様部に対称性の肉芽形成(kissing ulcer)は、気道が虚脱する際に気管軟骨部と膜様部が接触するほど重度の気道閉塞を示唆する
■胸部CT
- 気管気管支軟化症の原因や治療方針を決定する上で必要不可欠な検査
- 挿管している場合、筋弛緩下で①加圧(PEEP 10)と②非加圧(PEEP 0)で撮影すると、病変部の範囲や程度を推測できる
- 造影CTで大血管や心臓との位置関係を評価できる
治療
■呼吸管理
- 呼気時に気道が虚脱して狭窄をきたすため、内ステント効果を期待してまずNPPVをトライする
- 無効であれば人工呼吸器管理
- 高めの圧によるPEEP(8-10 cmH2O)
- 肉芽形成や気道粘膜の浮腫が重度の場合▶筋弛緩管理として気道の安静をはかる
- 約3-5日間の筋弛緩管理で肉芽や気道粘膜の浮腫が改善する
■外科的治療
①大動脈つり上げ術
広く普及している術式。
大動脈を前方につり上げ、胸骨に固定し、大動脈と結合組織で結ばれている気管前壁も前方に引っ張り上げる
良い適応:原発性気管気管支軟化症、食道閉鎖症、気管食道瘻に合併した気管気管支軟化症
向かないもの:大血管の圧迫による軟化症、先天性心疾患を合併する症例
②気管内ステント留置術
病変部へステント(金属製、シリコン製など)を留置する
肉芽形成や出血などの重篤な合併症の頻度が少なくなくステント除去術が必要になることがある
③気管外ステント術
気管・気管支外壁を人工血管に固定し気管内腔を広げる
気管、肺外気管支軟化症の治療としては極めて有用だが、病変部が肺内気管支や
胸腔外の気管へ及ぶ場合は適応外
合併症:異物留置に伴う縦隔炎、乳び胸

先天性心疾患に伴う気管気管支軟化症
- 気管気管支軟化症の原因が先天性心疾患奇形であることは決してまれではない
- 気管・気管支への圧迫の原因となる心血管病変は重複大動脈弓などの血管輪や、大動脈分岐異常などの血管異常や肺血流増加型の先天性心疾患(心室中隔欠損症や心房中隔欠損症など)など多岐にわたる
- 重複大動脈弓などの血管輪が最多。次いで心室中隔欠損症や動脈管開存症などの肺血流増加型の心疾患。

Pediatric Laryn-gology & Bronchoesophagology. Philadelphia: Lippincott-Raven, 1997:187-213
先天性気管狭窄症(完全軟骨輪)
- 通常、完全軟骨輪による狭窄病変を呈するまれな疾患
- 特に新生児、乳児例で50%以上に及ぶ広範囲型気管狭窄では生命を脅かす重篤な疾患
- 心血管奇形を高率に伴う

診断
■胸部X線:まず最初に行い、気管支透亮像を確認(本疾患では気管狭窄のため気管透亮像が不明瞭となる)
■気管支ファイバースコープ:確定診断必須▶気管輪による膜様部が欠如した全周性の狭窄を認める
■胸部CT:気管分岐以上や肺低形成などの合併症やPA(pulmonary artery) slingなどの心血管系の異常の評価を行う
■心エコー:心内奇形の合併が多いため、心内奇形の有無の評価。心機能や肺高血圧症の評価も行う
治療
- 気管狭窄の程度が軽く、呼吸障害が軽度である場合には、去痰剤や気管支拡張薬の投与にて経過観察可能
▶成長とともに狭窄が拡大し、症状が軽減していく
- 外科的治療が必要となるような重症例や、狭窄が軽度でも気道感染に罹患したときなどには、急性期治療として呼吸管理が必要となる
- 挿管管理の際には、気管内吸引による肉芽形成や気道粘膜の浮腫を予防する目的で、気管チューブの先端位置は気管支ファイバースコープで観察して、チューブの先端を気管狭窄部位の口側に位置するように調整
▶狭窄が強いと高い換気圧と長めの吸気時間(1秒以上)を要することもある - 気管吸引カテーテルの挿入は気管チューブ内とし、吸引の頻度も必要最低限とする
- 肉芽形成や気道粘膜の浮腫がある場合にはステロイド投与(吸入、静注)、アドレナリン吸入が有効なこともある
■外科的治療
・Slide tracheoplasty
第一選択で狭窄部中央の気管を横切開したのち、
上下の気管に縦切開を加え、スライドさせて側々吻合することで気管形成を行う

for the short-segment congenital tracheal stenosis
先天性気管狭窄症とPA sling
- 先天性気管狭窄症は心血管奇形を高率に合併する。その中でもPA slingの合併率は高く、先天性気管狭窄症と診断されたら、PA slingの検索は必須
PA sling
- 気管遠位部で左肺動脈が右肺動脈より分岐し、気管と食道の間から左主気管支の背側を走行して左肺門に至る疾患

William S. Ragalie MD, Michael E. Mitchell MD
Available online 26 November 2018, Version of Record 26 November 2018.
参考文献
- INTENSIVIST PICU 2012 vol.4 No.3
- Vascular Rings and Pulmonary Artery Sling : William S. Ragalie MD, Michael E. Mitchell MD
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