痙攣重積の患者やインフルエンザで意識障害患者のときなど急性脳症が疑う場面は時折経験すると思います。
最初は急性脳症か判断が困難なときも多いと思いますが、急性脳症が頭によぎったときはビタメジン、エルカルチンを投与しておいたほうが無難です。
投与して悪いことはないので迷ったら投与しておきましょう。
目次
ミトコンドリア救済の治療法 ※タウリン以外はミトコンドリア病、急性脳症に保険適応外
Leigh症候群や高乳酸血症などミトコンドリア機能以上が示唆されるとき治療法 推奨グレードC1
- Vit.B1
内服:アリナミン®F 50-100mg 分2
点滴:アリナミン®F注(50mg/20mL/管) 50-100mg 1日2回
※ビタメジン®静注用(100mg/1V)もVit.B1含有で使用可能 - L-カルニチン(レボカルニチン)
エルカルチン®FF内用液 10%
エルカルチン®FF錠(100mg)/エルカルチン®FF錠(250mg) 25-100mg/kg/day 分3(成人: 1.5-3g/day 分3)
エルカルチン®FF静注(1000mg)50mg/kgを3-6時間ごとに2-3分かけて静注or点滴静注
※最大300mg/kg/gday
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ビタメジンはメインに混注して投与、アリナミンは2-3分かけて静注しよう
その他のミトコンドリア治療候補薬 推奨グレードなし
- Vit.B2
リボフラビン細粒 50-200mg 分2 - Vit.C(1g/day)、Vit.E(100mg/day)、ビオチン(5mg/day)等のビタミン剤
MELASの治療(上記に追加して使用)
- アルギニン 推奨グレードB
脳卒中発作時:アルギU®注(10%) 1回5mL(0.5g)/kg 1時間かけて点滴静注
非発作時:アルギニン内服 0.3-0.5g/kg/day 分3 - タウリン 推奨の強さ1
発症予防に有効
15kg未満:3g/day 15-25kg未満:6g/day 25-40kg未満:9g/day 40kg以上:12g/day
ミトコンドリア救済以外の代謝改善薬 推奨グレードなし
- Vit.B6 推奨グレードなし
ピリドキサールリン酸 20-40mg/kg/day
ミトコンドリアカクテル療法 ※上記薬剤を併用して使用 推奨の強さ2
- ex1)体重10kg程度で下記の量を分3投与
- Vit.B1 100mg/day
- Vit.C 1g/day
- ビオチン 5mg/day
- Vit.E 100mg/day
- コエンザイムQ10 50mg/day
- L-カルニチン 300mg/day
- ex2)発症24時間以内に治療開始し、10日間使用
- Vit.B1 100mg/day
- Vit.B6 20mg/kg/day
- L-カルニチン 30mg/kg/day
当院では急性脳症が疑われる患者には入院時から
①ビタメジン®静注でVit.B1 100mg/dayとなるようにメインに混注
②エルカルチン®FF静注 30mg/kg/day 分3
を最低限投与している
最低5日間、少なくとも症状が安定するまで継続(内服移行可能】
ミトコンドリア救済薬の有効性
Vit.B1(チアミン)
- Vit.B1反応性ピルビン酸脱水素酵素複合体免疫異常症でLeigh脳症を発症した例など、ミトコンドリア異常に起因する脳症の一部に効果を示す可能性がある
- 稀な疾患だが、チアミンの代謝酵素やトランスポーターの異常で脳症を発症する例があり、チアミン補充で改善する
- Vit.B1欠乏によるWernicke脳症は小児でもイオン飲料水過剰摂取などで発症例はあり、必須の治療法
L-カルニチン
- 原発性カルニチン欠乏症ではReye様症候群を発症することがある
- 栄養低下、バルプロ酸やピボキシル基含有抗菌薬などの薬剤はアシルCoA脱水素酵素欠損症では、続発性カルニチン血症を起こし、脳症を誘発する例があり、これらの状態にはカルニチン補充が有効
- カルニチンパルミトイルトランスフェラーゼ(CPT2)欠損症なども脳症を発症するリスクでありカルニチン補充が必要
- CPT1欠損症ではカルニチンの使用は禁忌なので要注意
コエンザイムQ10(ユビキノン)
- 電子伝達系に必須の因子で抗酸化作用も持つ
- ラットへの経口投与で脳内の濃度は上昇しなかったという報告があり、血液脳関門を通り脳並行することは示されておらず、脳症で使用するエビデンスはない
アルギニン
- 尿素サイクル異常性で高アンモニア血症による脳症ではアンモニア排泄に使用される
- MELASでは障害されている血管内膜の機能を回復させ、血流を良くして、梗塞様発作を改善し、予防する効果が報告されている
タウリン
- MELAS患者の脳梗塞様発作の再発率を2.22から0.72に低下させた
Vit.B6
- West症候群や新生児・乳児期のてんかんの一部に有効性を示すが、詳細な作用機序は不明
- 急性脳症への有効性としては、Vit.B1とカルニチンとの併用が二相性急性脳症の発症リスクを軽減する可能性が報告されているが、単独での有効性の報告はない
ミトコンドリアカクテル療法
- エビデンスは確率していないが、各薬剤で上記有用性が考えられ、副作用が少ないため、ミトコンドリア異常が疑われるときにはすぐに治療開始する
- AESDでも24時間以内に治療開始した例の予後は良好だったとの報告があり、急性脳症でもミトコンドリア機能改善のために使用することも検討する
- 初回のてんかん重積状態後24時間以内の治療開始でAESDの予後が改善された報告がある
【参考文献】
- 小児急性脳症診療ガイドライン2023
- インフルエンザ脳症の診療戦略 平成30年1月
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